東大物理学科教授 山本智先生の寄稿 第五章その2

このように書くと、大変な世界だと思うかもしれない。たしかにその通りである。だが、研究するという「自由」には「責任」が伴う。自己満足を許してもらうためには、それまでの実績が十分評価されるものでなければならないのだ。考えてみれば、これは当たり前である。従って、競争の中で生きることになるのだが、不思議と他人との競争だとは感じない。むしろ、自然を相手に自分がどれだけのことができたかがいろいろな形で評価として現れているように思う。そして、もし不幸にして常勤の研究職に就けなかった場合でも、30代前半であれば企業等に就職先を見つけることはそれほど難しいことではない。理系出身者を求める分野は少なくないからだ。事実、博士の学位をもって新天地で活躍している卒業生も多い。そういう人たちは、今は別な仕事をやっているが、研究経験は生きているはずだ。

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